授乳中、なぜか急に落ち込む…それって「D-MER」かもしれません

出産後

はじめに

こんにちは。助産師のちゅう子です。
今回は「D-MER(ディーマー)」について解説します。初めて聞く方は「??」かもしれませんね。私も助産師になってしばらくしてから知りました。

簡単にいうと「授乳中に不安、悲しみ、イライラ、恐怖…といったネガティブな感情が現れること」です。
授乳は赤ちゃんとのスキンシップでもあるので楽しい気持ちでしたいですよね。でも授乳の際にネガティブな気持ちになるのであれば、授乳を辛く感じてしまうでしょう。

うちの病院で出産した方で「D-MERなので授乳をしません」ときっぱりとやめる方が何名かいました。
それも一つの選択肢だと思います。ですが、決める前に母乳を続けるメリットやD-MERについて知る機会を作ってもらいたいと感じています。

D-MER(不快性射乳反射)とは?

D-MER(Dysphoric Milk Ejection Reflex)は、自分の乳房から直接授乳をする母親が自覚する、
射乳反射(母乳が出始める瞬間)が引き起こされる前後に突然生じる不安、悲しみ、恐怖、気分の落ち込みといったネガティブな感情を主とする不快感」のことです。

症状・自覚時期

「不安、悲しみ、イライラ、パニック、興奮、過敏、恐怖、空虚、怒り」などの色々な症状が考えられます。
症状が強い場合は「興奮や怒り」といった症状が現れやすいようです。

産後2~3か月までに自覚する方が多いようです。早い方だと産後1週間以内に自覚します。
私が勤めている病院では「妊娠中に行った乳頭マッサージで不快感があった」という方がいました。このように、赤ちゃんに授乳する前に自覚される方もいます。

ちゅう子
ちゅう子

入院中や退院後に授乳で不快感があった場合は、身近な助産師に相談してみましょう

持続時間・頻度

数分程度(5分未満)の方が多いようですが、それ以上続く方もいます。
1~2分以内に改善する方が最も多く、短い方だと数秒~1分以内に改善されます。

毎回不快感を感じる方もいれば、たまに感じるという方もいます。そのため、頻度や持続時間はお母さんそれぞれです。

ちゅう子
ちゅう子

持続時間が長い方頻度が高い方ほど不快感を強く感じる傾向にあります

症状のある期間

症状の頻度が少なく軽症の場合は3か月程度で治まってくる方が多いですが、症状が強い場合は卒乳まで続く方もいるそうです。

一人目でD-MERの症状がでることもあれば、二人目以降に自覚される方もいます。

自覚症状が強い方ほど母乳育児への影響を強く感じている傾向にあります。そのため母乳の回数を減らしたり、母乳育児を中断する選択をする頻度が高くなりやすいです。

なぜ起こるの?

主な原因と考えられているのは、ドーパミンの急激な低下です。

射乳反射が起こるとき、プロラクチン(母乳をつくるホルモン)を出すために、脳内のドーパミンが一時的に下がることがあります。
このとき、気分に影響する「ドーパミン」が一気に落ちるため、一時的にネガティブな感情が湧き上がるのです。

ちゅう子
ちゅう子

身体って不思議ですよね… ただ、症状の理由がわかると少し安心しますよね!

対応方法

D-MERは、意志や性格の問題ではありませんホルモンの影響による「体の自然な反応」です。

見た目には現れない症状ですし、D-MERを知らない方も多くいます。「実は自分はD-MERだったんだ」としばらくしてから気づく方もいると思います。

もし可能なら、周りの家族や医療者に相談してみてください。周囲の理解があるだけでも、気持ちが楽になることもあるでしょう。

以下に対応策の一例を挙げます。ポイントは以下3点です。

  • 自分や周囲がD-MERを理解すること
  • できる範囲で生活改善に取り組むこと
  • 授乳の苦痛を軽減する方法を取り入れること
対応方法の一例説明
自分がD-MERだと「知ること」名前や症状がわかるだけでも、気持ちが軽くなります
家族に理解してもらう「授乳中ちょっと気持ちが沈むことがある」と伝えるだけでも良いでしょう
無理に我慢しないミルク併用も検討してみると良いでしょう。自分の心が元気なことを大事にしてください
カフェインの摂りすぎや睡眠不足を避ける
ストレスを溜めすぎない
バランスの良い食事を心がける
ドーパミンの乱れを最小限にするための生活改善方法です
好きな音楽を流したり、お菓子を食べながら授乳するリラックスしたり、気分を紛らわせたりして授乳してみてください

おわりに

もし気分の落ち込みが強く、授乳以外でも続くようなら、産後うつなど別の可能性もあります。専門の医療機関や、身近な助産師・保健師などに相談しましょう。

一言にD-MERといっても、その症状は人によって様々であることがわかりましたね。
不快に感じる頻度や症状の継続期間なども個人差が見られました。そして、その症状の程度によってお母さんの負担感も変わってきます

生理痛やPMSと同じかもしれませんね。みんな症状が違うし程度も違う。それに対する感じ方も違う
「私は我慢できたから、あなたも大丈夫でしょ?」といった考えは当てはまりません。それぞれが感じる辛さがあることを理解し、今できる改善策を考えていければ良いですね。


参考文献

  • 日本母性看護学会誌 Vol. 25 No. 2 2025 我が国における不快性射乳反射(D-MER)に関する実態態調査
  • よくわかる母乳育児
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